1.
非臨床毒性試験における眼科学的検査所見の叙述的記録方法
友廣, 雅之
比較眼科研究,
2014, Volume:
33
Journal Article
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非臨床毒性試験の眼科学的検査においては、試験責任者、開発担当者、受託研究機関においては委託者、当局の審査担当者などに対して所見の特徴を客観的に説明できる叙述的記録が必要である。適切な叙述的記録は、認められた所見の発症機序について、解剖学的、病態生理学的に説明する手がかりとなる。叙述的記録の基本的要件には、「所見」とそれが生じた「組織」と「部位」、さらに「数」、「形状」、「色」、「大きさ」、「程度」、「その他の特徴」の情報が含まれる。叙述的記録のためには、用語集・辞書を整備し、施設ごとに共通の見解を有していることが重要である。近い将来に新薬の承認申請時に電子データ提出が求められると予想されるが、その際には叙述的記録の重要性がさらに高まると考えられる。
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2.
眼毒性リスク評価のサイエンス:お作法からの脱却
小野寺, 博志; 佐々木, 正治; 大竹, 誠司 ...
比較眼科研究,
12/2013, Volume:
32
Journal Article
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ヒトは外部情報の約80%を視覚から得ているといわれ、視覚を喪失した場合、QOLは大きく低下する。そのため視覚毒性のリスク評価の重要性は極めて高い。しかし、医薬品を申請するための安全性を担保する非臨床毒性試験ではICH S4ガイドラインにおける眼検査の記載は限定的であり、当該眼検査だけでは、ヒトに外挿できる眼毒性リスク評価は十分とは言えない。 ...
眼は複雑に進化した特殊な組織の集合体で、各組織のバランスによって恒常性を保ちながら機能を維持している。一部の機能の恒常性が破綻した場合、全体の機能に影響を及ぼすことになる。薬物の影響を評価する場合、眼の解剖学的構造や各器官の機能を理解することは得られる変化のメカニズムを解析する助けとなる。 非臨床毒性試験の眼検査においては,各種検査の原理と特徴を充分に理解しておかなければ、認められた変化の評価を誤ることもある。薬物投与前後の検査所見の比較はもとより、用いた動物の種差、系統差、週齢差による特性、発症部位を把握しその意義を考慮することが重要である。また、実験動物には眼の自然発生病変が多数認められることが知られ、薬物投与に起因する毒性所見との鑑別には検査技術の習得と背景データの集積が極めて重要である。動物の眼検査から得られた所見を、ヒトに外挿するためには、臨床的重要性に応じた評価が必要である。 眼球の病理組織標本作製には、慎重な臓器採取及び適切な固定条件の選択が重要で、病変部位を正確に組織標本に反映させるためには眼検査担当者、剖検者及び組織標本作製者が事前に協議し情報を共有しなければならない。病理組織学的変化のみで、眼毒性を診断することには限界があり、他の検査データと関連づけて考慮することが重要である。 以上、眼毒性のリスク評価にあたっては、非臨床毒性試験におけるすべての検査データを総合的に判断することが必要で、そのためには、眼検査担当者はもちろん、試験責任者(トキシコロジスト)、一般状態観察者、組織標本作製者、病理検査者が協力して適切な評価を行わなければならない。
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3.
実験動物の眼検査と毒性リスクアセスメント
友廣雅之
比較眼科研究,
12/2015, Volume:
34
Journal Article
「序文」医薬品の非臨床毒性リスク評価の一環として, 反復投与毒性試験で一般的に眼検査が実施される. 本邦では毒性試験ガイドラインに, 眼検査の実施が定められているが, 検査方法に関する具体的な記述はなく, 試験実施者の裁量に委ねられている. 現状では, 倒像検眼鏡と細隙灯顕微鏡の組み合わせがルーチン検査として実施されることが多い. 本稿では, 最初に代表的な薬物誘発性眼病変の発症機序を紹介し, ...
反復投与毒性試験における眼検査と眼毒性リスクアセスメントについて考察したい. 「眼毒性発症機序」眼のいずれの組織においても医薬品による毒性発現の可能性があるが, 本稿では臨床的重要性が高い毒性徴候がしばしば認められる角膜, 水晶体及び網膜の毒性発症機序について考察する. なお, ここに記載した機序で, 全ての眼毒性を説明できるものではないことをあらかじめ承知頂きたい. 「1) 角膜」角膜における代表的な薬物誘発性病変は混濁で, 発症部位や機序によって所見の特徴に違いがある.
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4.
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5.
「医薬品開発毒性研究者と眼科専門家のクロストーク」Q&A
小野寺, 博志; 友廣, 雅之; 大竹, 誠司 ...
谷本学校 毒性質問箱,
2020/09/26, Volume:
2020, Issue:
22
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医薬品の副作用として失明など眼に関する重篤な毒性が発現すると、患者のquality of ...
lifeが大きく損なわれるとともに、市場からの撤退、あるいは医薬品開発の中止に至る可能性が高いため、非臨床毒性試験における眼毒性評価は重要である。安全性評価研究会でもこれまでに眼毒性について継続した議論を行ってきた1)。眼科学的評価に関しては、通常、反復投与毒性試験において、肉眼的及び検眼鏡を用いた検査、網膜電図(electroretinography: ERG)などの視覚機能を評価する検査及び病理組織学的検査が基本的な項目としてガイドラインに規定されており2)、それらの検査で眼毒性が懸念される場合は別途適切な試験系を選択し精査が必要である。反復投与毒性試験以外の毒性ガイドラインでは眼毒性評価に関する記載は少なく、眼毒性評価の位置づけが明瞭になっていない。さらに、通常実施される一般的な非臨床毒性試験では全身のあらゆる臓器の毒性を多岐にわたり評価することから、眼科学的な試験法や所見について毒性学的評価法、判断基準に精通している毒性専門家は少ない。2019年7月に開催された第39回比較眼科学会年次大会の基礎部会セッションにおいて、比較眼科学会と安全性評価研究会の共同企画として、毒性研究者が抱いている眼毒性に関する疑問について、眼科専門家のパネリストとフロアが議論し、医薬品開発における眼毒性への考え方や試験デザイン及び評価まで幅広く理解を深める機会をもった。本稿では、同セッションで議論された内容を中心にQ&A形式で紹介する。
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6.
Crl:CD(SD)ラットにおける自然発生眼病変
坂, 芳樹; 友廣, 雅之; 稲垣, 覚 ...
比較眼科研究,
2008, Volume:
27
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2004年から2007年に当研究所で実施したCrl:CD(SD)ラットの眼科検査の背景対照データを収集し、自然発生眼病変を解析した。眼科検査は一般毒性試験22試験の対照群(10-20匹/性/試験)に用いた484匹(検査時週齢:8-31週)について、倒像検眼鏡とスリットランプを用いて実施した。高頻度で認められた病変は角膜と水晶体の混濁であり、その頻度は各々47%と31%であった。結膜、虹彩、硝子体、網膜及び脈絡膜の自然発生眼病変頻度は2%以下であった。角膜混濁は、ほとんどのケースで眼瞼裂に沿って内側から中心部または外側に観察された。水晶体混濁は前部被膜直下、前部皮質、核皮質移行部、核部、後部皮質及び後部被膜で観察され、核部の混濁が23%の高頻度で認められ、次いで前部皮質の混濁が8%の頻度で認められた。角膜と水晶体混濁の頻度を試験単位に分け解析した結果、角膜と水晶体の混濁には動物のロット間差が大きいことが示唆されたが、検査した週齢の範囲において角膜と水晶体の混濁の頻度と週齢の間に関連性は認められなかった。
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7.
UPLラット白内障の発現遅延について
古川, 敏紀; 信清, 麻子; 古本, 佳代 ...
比較眼科研究,
2000, Volume:
19
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8.
UPLラットの白内障病変
友廣, 雅之
比較眼科研究,
1999, Volume:
18, Issue:
3-4
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9.
自然発症白内障モデル動物
友廣, 雅之
比較眼科研究,
1998, Volume:
17, Issue:
3-4
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ラットおよびマウスの自然発症白内障モデルについて最近の知見を紹介する。UPLラットヘテロ型、ICR系ラット、RCS系ラット、Emoryマウス、SAMマウスの白内障発症機序には、水晶体の酸化障害が関与している。ICR系ラット、Nakanoマウスでは、イオンポンプの異常が報告されている。また、UPLラット、SCR系ラットでは、タンパク質分解酵素の活性化によるタンパク質の変性が報告されている。これらの遺伝性白内障モデルを組み合わせた研究は、ヒト白内障の発症機序の解明あるいは新たな治療方法の確立に寄与するものと思われる。また、胎生期から形態変化が始まるUPLラットホモ型、Bmn系(BW系)ラット、Ctsマウス、Cataract-Fraserマウス、Eloマウスなどのモデルでは、小眼症を併発するケースが多い。これらのモデルは、小眼症を併発するヒトの先天性白内障の研究モデルとして活用できるであろう。
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10.
UPLラット遅発型白内障水晶体における還元型グルタチオン、ナトリウム、カリウム、カルシウムレベルの変動
友廣, 雅之; 伊藤, 吉將
比較眼科研究,
1998, Volume:
17, Issue:
3-4
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生後に白内障が発症する遺伝性白内障モデル、UPLラット遅発型白内障の発症機序を検討するため、水晶体還元型グルタチオン(GSH)、ナトリウム、カリウム、カルシウムレベルを測定した。様々な週齢の遅発型UPLラットの水晶体を摘出し、HPLC法でGSHを、原子吸光法でカチオンを測定した。GSHは、白内障発症の初期段階より減少し、この時期からの水晶体の酸化障害の可能性が示唆された。一方、ナトリウム、カリウム、カルシウムレベルは成熟白内障が形成される段階で変動した。以上の結果、酸化障害によってカチオンポンプあるいは膜機能の異常が生じ、水晶体の膨潤およびタンパク質の会合・凝集が引き起こされ、最終的に成熟白内障を形成する機序が示唆された。
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