1.
理学療法施行患者の状態変化カードの試作と運用
山野, 薫; 薬師寺, 里江; 大平, 高正 ...
理学療法科学,
2007, Volume:
22, Issue:
2
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筆者が勤務する医療機関の理学療法部門で,臨床での状態変化を記載する「状態変化カード(カード)」を作成し,カード119件の内容を分析した。状態変化の原因は,循環器系の変動,運動器系の変化,精神・心理面の変化など,多様な理由であることがわかった。さらに,カードを病院内のLocal Area ...
Networkにより公開をし,効果的な運用を試みた。これにより,病院全体で理学療法を施行している患者の状態把握ができるようになった。また,病院内で定められているインシデント・アクシデント報告書の内容がポジティブに変化した。カードは,理学療法部門からのリスクマネジメントに関する情報発信となり,アクシデントを回避できることを示唆している。
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2.
急性期病院における理学療法対象者の血圧脈波検査装置を用いた動脈硬化の調査とその活用
山野, 薫; 大平, 高正; 薬師寺, 里江 ...
理学療法科学,
2007, Volume:
22, Issue:
4
Journal Article
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骨関節,脳血管,循環器などの各疾患で理学療法依頼のあった47人を対象に,血圧脈波検査装置を用い,Cardio Ankle Vascular ...
Index(CAVI)を測定し検討した。CAVIは,四肢の動脈硬化傾向を示すものであり,高血圧,狭心症,糖尿病の3疾患のうち,2つ以上の疾患に罹患している群とそれ以外の群で有意差を認め,狭心症既往の有無でも有意差を認めた。このことは,重篤な末梢循環障害や冠動脈疾患へ発展する可能性を示しており,運動療法を実施する上で注意が必要なことを意味している。運動療法前に血圧脈波検査を施行することは,運動負荷における有益な一情報と考えられた。
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3.
心不全患者における足底板の有効性の検討 ~6MWD を用いて
溝内, 一也; 杉田, 憲彦; 阿南, 裕樹 ...
九州理学療法士学術大会誌,
2023
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【はじめに】 ...
心不全患者は運動耐容能の低下によりADLの制限を生じており、運動耐容能の改善には運動療法等が必要不可欠であるが、長期間の運動療法を要する場合もある。足底板療法(以下、足底板)は変形性膝関節症のガイドライン等での有効性が示されているが、心不全患者への有効性は示されていない。しかし、我々は足底板を挿入することで、歩行時の運動耐容能やADLを改善させた心不全症例を報告した。そこで本研究では、足底板が心不全患者に対して、歩行における運動耐容能を即時的に改善する手段として有効であるか検討した。【方法】 対象は2020年1月~2021年12月に心不全で入院し、維持・回復期に心臓リハビリテーションを実施した6分間歩行距離(以下、6MWD)を測定可能な16名(NYHAⅠ-Ⅱ、年齢:78±11.7歳、性別:男性8名、女性8名)とした。靴の不所持、認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール≦20)、歩行時に疼痛を有する者は除外した。運動耐容能の評価には6MWD、足底板は作成が容易で汎用性の高いパッド貼付型足底板を採用した。6分間歩行試験(以下、6MWT)は、反復により歩行距離が向上する学習効果が報告されていることを考慮して、初回の足底板非挿入(以下、初回)、足底板挿入(以下、挿入時)、最終の足底板非挿入(以下、最終)の順に計3回測定し、試験間は3日以内として比較、検討した。統計学的解析はEZR(ver2.5-1)を使用し、反復測定分散分析と事後検定として多重比較検定(Bonferoni法)にて比較した。有意水準は5%とした。【結果】 6MWDは初回:254.9±114m、挿入時:290±106.1m、最終:262.8±111.7mであった。挿入時は初回、最終の非挿入時と比較し、それぞれ有意差を認めた(p<0.05)。非挿入時(初回、最終)間では初回と比較し、最終の方が向上傾向であったが、有意差を認めなかった。【考察】 足底板挿入時と初回、最終の非挿入時それぞれに有意差を認めたことから、足底板が即時的に心不全患者の6MWDを向上させることが示された。心不全患者は運動耐容能の低下により、息切れや疲労感が出現し6MWDが低下する。しかし、足底板を挿入することで、足部を中心とした下肢機能の改善に伴い、歩行時の重心移動を円滑化させ、歩行効率を改善させたことが6MWDの向上につながったと考える。【まとめ】 足底板は心不全患者の6MWDを改善させたことで、歩行における運動耐容能を即時的に向上させる為の有効な介入手段になる可能性が示唆された。今後は6MWTにおける心拍数やRPE等の変化にも着目し、心不全患者に対する足底板の効果について検討していきたい。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会にて承認を得て(第2007号)、ヘルシンキ宣言に基づき調査研究を行った。また研究の実施に際し、対象者に研究についての十分な説明を行い、同意を得た。
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4.
高齢者の歩行開始にみられる作用点の後方移動と足指機能,足関節筋力,静的立位バランス能力との関連性
大平, 高正; 池内, 秀隆; 伊藤, 恵 ...
理学療法学,
2004/12/20, Volume:
31, Issue:
7
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本研究の目的は,高齢者を対象に歩行開始時の足圧中心点(以下,COP)の後方移動(以下,逆応答現象)を調べ,1)足指筋力,足関節背屈筋力,歩行開始前後の静的バランス能力との関連性を調べること,2)各パラメータの若年者との相違を調べ,高齢者における逆応答現象の移動距離が減少する要因を調べることである。中枢神経疾患の既往の無い,在宅生活を送っている自立歩行可能な高齢者15名を対象とした。計測パラメータは,①逆応答現象の前後方向最大距離 : As,②逆応答現象の左右方向最大距離 : Al,③歩行前静止立位バランス : Bd,④歩行後静止立位バランス : Ad,⑤逆応答出現までの潜時 : Cd,⑥足指最大圧縮力体重比 : Fg,⑦足指圧縮力の増加の傾き : Gs,⑧足指圧縮力発生までの潜時 : Gd,⑨足指圧縮力発生から最大圧縮力までの時間 : Tp,⑩足関節背屈トルク体重比 : Dtとした。AsとAlに強い正の相関が認められた。AlとBdに負の相関が認められた。CdとGdに正の相関が認められた。若年者群との比較では,高齢者群はGsが有意に低かった。転倒群に対し運動療法を施行するとAl,Gsの増大,Bd,Gdの短縮が認められた。今回の調査では,高齢者の逆応答現象に関与する因子の明確化には至らなかった。
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5.
急性期理学療法における適切な運動負荷量設定に関する一考察
弓, 早苗; 大平, 高正; 藥師寺, 里江 ...
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌,
2008
Journal Article
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【はじめに】 ...
疾病の急性期では、主病名や合併症の有無に関わらず、運動療法実施中に循環器症状が出現することは稀ではなく、運動負荷量の設定に苦悩する。循環器症状出現の危険因子として動脈硬化、高血圧、糖尿病などが挙げられる。一般的にこれらは、循環器疾患、脳血管疾患患者では合併していることが多い。しかし、先行研究では、運動療法中に不整脈の出現や血圧の著変などの循環器症状が出現した患者のうち、3割は整形外科疾患患者であった。今回、整形外科疾患患者に対する運動療法実施中に、循環器症状が出現した症例を経験したので、急性期理学療法における運動負荷量の設定について考察を含め報告する。 【症例1】 45歳、女性。既往歴:特記事項。合併症:高血圧、糖尿病。左股関節全置換術施行。3病日:理学療法開始。27病日:心室性期外収縮の三段脈出現し、理学療法を中止した。28病日:循環器内科受診し、経過観察となる。31病日:自宅退院。 【症例2】 74歳、女性。既往歴、合併症:特記事項。左大腿骨頚部骨折発症。7病日:人工骨頭置換術施行。16病日:理学療法開始。開始当初より、血圧高めで経過。34病日:脳梗塞発症。理学療法中止。 【症例3】 82歳、女性。既往歴:特記事項。合併症:高血圧。右大腿骨顆上骨折受傷。5病日:観血的骨接合術施行。18病日:理学療法開始。35病日:理学療法終了時、心房頻拍が出現し、理学療法を中止した。循環器内科受診。経過観察となる。84病日:自宅退院。 【考察】 症例1、2、3ともに循環器症状の出現により理学療法を一時中止せざるをえなくなった。これは、実施していた運動負荷が患者の循環機能にとって過負荷になっていた可能性がある。この原因は、セラピストが運動機能向上に着目しており、循環機能に対する適切な運動負荷の設定を行えなかったためであると考える。当科で行った調査では、運動療法実施中に循環器症状が出現した患者のうち半数は高血圧、糖尿病、心疾患の合併症を一つも有していなかった。つまり、運動機能に対する運動負荷が、合併症の有無に関わらず、患者の循環機能に対しては過負荷となる可能性は十分にある。循環機能に着目した運動負荷とは、運動療法室内だけではなく、病棟での活動状況も含まれる。運動機能が向上すれば、病棟での生活状況は変化し、活動量は増加してくる。さらに循環機能は内服・睡眠・食事・排泄の状況にも影響される。適切な運動負荷の範疇で、積極的に運動療法を展開することが理学療法士の専門性であるが、一方で我々理学療法士のみではすべての情報を総合的に解釈し、適切な運動負荷量を決定することは非常に困難である。そこで情報の解釈を看護師に委ね、全身状態をアセスメントする看護師と協同することで、運動機能・循環機能に見合った運動負荷量の決定が可能となり、より安全で効果的な理学療法が展開できる。
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6.
開心術後に発生する疼痛についての一考察
大平, 高正; 木村, 浩三; 弓, 早苗 ...
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌,
2008
Journal Article
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【はじめに】 ...
2006年に心大血管疾患としての疾患分類が定義されてから、全国で心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、積極的に実施されている。心リハは大きく分けて、内科領域の冠動脈インターベンション後、慢性心不全と外科領域の開心術後に分けられる。ADLの拡大および運動療法を実施するうえでの阻害要因として、(1)不整脈の出現、(2)運動耐用能の低下である。開心術後は、これらの要因に加えて術後疼痛の出現があげられる。術後疼痛の出現は外科領域の特徴であり、我々理学療法士がアプローチできる部分も大きい。しかし、術後疼痛の発生要因について考察した報告は少ない。今回、術後疼痛に関する調査を行ったので報告する。 【方法】 対象は、2006年1月から2007年9月に、当院心臓血管外科にて行われた開心術患者65例。術式は、CABG23例、AVR19例、MVR10例、AVR+MVR5例、CABG+AVR1例、CABG+MVR1例、CABG+MVR+AVR1例、その他4例であった。調査方法は、カルテによる後方視的調査とした。疼痛部位は患者の訴えおよびセラピストのアセスメントにより判断した。また、疼痛の有無で群分けし統計学的検討を行った。 【結果】 術後疼痛の訴えた患者は31例(48%)であった。疼痛の発生部位(重複あり)は、肋椎関節部23例、胸肋関節部8例、術創部(正中創)7例、頚部3例であった。疼痛の有無による2群間には、年齢、性別、術式による差はなかった。 【考察】 開心術後の疼痛発生の主な部位が、肋椎関節および胸肋関節であることから、肋骨が何らかの原因になっていると推察される。特に上位肋骨の運動方向は開胸器の運動方向と異なるため、手術時に上位肋骨に関連する軟部組織が障害されたことで疼痛が出現している可能性がある。加えて、術中体位も術後疼痛の発生に影響している可能性がある。開心術の体位は、術野を確保するために頚部伸展および胸椎を伸展させる。胸椎を伸展させるために胸椎部に肩枕を挿入する。肋椎関節部に疼痛を訴えた患者は、肩枕の設置場所と同部位の胸椎が扁平になっていた。胸椎の扁平化が、肋骨の可動性を低下させ、その結果、疼痛が出現していると推察した。今回、調査していないが、手術時の肋骨に関連する軟部組織の障害に起因した疼痛では術後早期から疼痛が出現する。胸椎の扁平化による肋骨可動域の低下に起因する疼痛では上肢の使用頻度が増えてから、つまりADL拡大時に疼痛が出現する。疼痛出現時期との関連性については今後の課題とした。また、少数ではあるが、術創部や上位肋骨の関与が考えにくい部位にも疼痛の訴えがあった。変形性頚椎症などの頚椎疾患が既往として存在すれば、長時間の頚部伸展位によって神経症状が出現する可能性も否定できないため、術前に評価しておくことも重要である。
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7.
立ち上がりの動作分析
神崎, 裕美; 大平, 高正; 高橋, 朋子 ...
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌,
2006
Journal Article
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【目的】 立ち上がり動作(sit-to-stand:STS)は、日常生活の中で頻繁に行われる動作の1つである。臨床では、患者の身体機能に即したSTSの指導が要求されるため、種々のSTSパターンの詳細な解析が必要である。今回、3パターンのSTSについて、筋の活動順序や活動量を表面筋電図によって解析したので報告する。 【方法】 ...
対象は、健常女性(年齢:26歳、身長:161cm)。表面筋電図測定装置(NORAXON社製TEREMYO2400)を用いた。サンプリング周波数は1,500Hzとし、0.05秒間隔で平均振幅を算出した。対象筋は左側の多裂筋(Mf)、脊柱起立筋(SE)、腹直筋(RA)、大殿筋(GM)、内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、半腱様筋(St)とした。計測動作は、40 cm台からの自由速度でのSTS(自由型)、手すりを用いてのSTS(手すり型)、両手で坐面を押してのSTS(プッシュアップ型)とした。同時にビデオ撮影を行い、静止坐位から殿部離坐までを第一相、殿部離坐から立位までを第二相として解析した。 【結果】 活動順序は、自由型でSE、Mf、VM・VL、St、GM、手すり型で、VM・VL、SE、Mf、St、GM、RA、プッシュアップ型でRA、VM・VL、St、GM、Mf、SEであった。自由型は、殿部離坐時にVM、VLの平均振幅波形の傾きが大きかった。自由型のピークと比較した手すり型における各筋の平均振幅値の割合は、第一相のVMで47%、VLで34%、SEで36%、第二相のSEで19%、RAで392%であった。同様に、プッシュアップ型では第一相のRAで815%、第二相のVMで27%、VLで46%、SEで197%であった。 【考察】 自由型の特徴は、殿部離坐時の体幹屈曲角度が3パターンの中でも最大であり、VM、VLの平均振幅波形の傾きも大きかった。これらより、自由型は殿部離坐時の体幹屈曲と強い膝伸展筋活動によりSTSを完成させると考えた。手すり型は第一相のVM、VL、SEの活動が抑制され、SEの活動も遅れた。これは重心の前方移動が体幹屈曲でなく、上肢での誘導により行われたためである。第二相では全体にわたってSEの活動が抑制された。これは、手すりを用いることで体幹の制御を行ったためである。また、第二相初期のみRAの活動が大きくなったのは重心が足部後方へ位置しているため、体幹の屈曲モーメントが大きくなったためである。これらより、手すり型は、全体的には体幹筋抑制型と考えることができる。 プッシュアップ型は第一相では、両手で坐面を押す動作が体幹屈曲角度と重心の前方移動を最小にするため、RAのみの活動となっている。第二相では、両手が坐面から離れた時の体幹屈曲角度が最大となり、SEの活動も高まった。また、SEの活動は立位まで続いた。これは上肢から体幹へと体重負荷の移動が起こり、そこから体幹を伸展していくためである。これらより、プッシュアップ型は、全体的には体幹優位型と考えることができる。
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8.
高齢者の歩行開始の足圧中心点移動距離と足指機能の関係および転倒との関連性
大平高正; 池内秀隆
理学療法学,
04/2003, Volume:
30, Issue:
suppl-2
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【はじめに】在宅高齢者は屋内移動が多く, 歩行開始と停止を繰り返して生活の大半を過ごしている. そこで歩行開始の評価の必要性がある. 本研究では, 歩行開始の足圧中心点(以下, COP)の遊脚側への後方および側方移動距離と足指機能の関係を測定し, 転倒との関連性も考察した. 【対象】中枢神経疾患の既往の無い, 在宅高齢者9名(男性5名, 女性4名, 平均年齢78.8±5.4歳)であった. ...
【方法】問診にて, 過去一年間の転倒の有無と回数を調査した. 歩行開始の測定は, キスラー社製床反力計9286Aを4枚(左右各2枚)用い, サンプリング周波数は150Hzとした. 床反力計の上に静止立位し, 旗を降ろす合図で歩行を開始した. 歩行は5m行い, 歩き始めの1から4歩目を計測した. 床反力からCOP軌跡を算出した. 足指機能の評価は, 足指把握力と足指運動能を測定した. 足指把握力の測定は, 竹井機器社製のグリップ5101を改良したものを用いた. 端座位で足関節を90度に固定し, 母指の中足指節関節にバーをあわせた. 足指の屈曲によりバーを引き付け, その時の力を測定した. 左右各3回行い, 左右の最大値を足した値を採用した. 足指運動能の測定は, TAJIMA社製のRoad Measureを改良したものを用いた. 足指の屈曲にて軸を回転させるように指示した. 15秒間を3回行い, 最大値を採用した. 【結果】1)過去一年間の転倒経験者は, 4名であり, 3から10回と複数回の転倒を経験していた. 2)歩行開始時のCOPの最大後方移動距離(以下, Ay)の平均は3.2±0.5cmであり, その時の側方移動距離(以下, Ax)の絶対値の平均は1.5±0.5cmであった. 3)足指把握力の平均は8.37±4.46kgであり, 足指運動能は87.8±55.1cmであった. 4)Axと足指把握力には, 有意な強い相関が認められた(r=0.73:p<0.05). 5)過去一年間の転倒経験者(以下, 転倒群)と非転倒者(以下, 非転倒群)に分け, 相関分析とMann-WhitneyのU検定を行った. 足指運動能とAyで転倒群の方が全て小さい傾向にあったが, 有意差は認められなかった. 足指把握力とAxは転倒群の方が有意に小さかった(p<0.05). 【結論】高齢者のAxと足指把握力に強い相関がみられた. 歩行開始はCOPの遊脚側への移動が重要であり, 足指機能はCOPの側方への移動を保障していることが推察された. また転倒との関連性は, 転倒群の方がAx, 足指把握力が有意に小さいことから, COPの側方移動が不十分で身体動揺を増加させ, 転倒へ結びついている可能性が示唆された.
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9.
歩き始め動作に対する徒手的誘導の一考察
伊藤, 恵; 大平, 高正; 山野, 薫 ...
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌,
2006
Journal Article
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【はじめに】 臨床では、定常歩行で安定しているものの歩き始めや終わりにふらつきや転倒に対する不安感を訴える患者をしばしば経験する。このような症例に対し、具体的な運動療法を示した報告は少ない。 ...
歩き始め動作は、重心の移動に先行して遊脚側の股関節外転モーメントが発生するといわれている。そこで、本研究では効果的な治療を提供することを目的に、表面筋電図を用いて、健常成人の歩き始め動作における徒手的誘導練習の前後で股関節外転筋の筋活動について調査を行なったので、報告する。 【対象と方法】 対象は、骨・関節疾患、神経疾患、循環器疾患の既往のない健常女性(年齢;27歳、身長:160cm)とし、対象筋は左右の中殿筋、大腿筋膜張筋の4筋とした。表面筋電図測定装置は、テレマイオ2400(Noraxon社製)を用い、サンプリング周波数は1,500Hzとした。 方法は、左右各側より静止立位から歩き始め動作の1歩を測定した。筋活動の判断基準は3SD(基線の3倍)を用い、遊脚側の股関節外転筋活動の有無を確認した。その後、セラピストは振り出す下肢の股関節周囲を把持し、足圧中心点(center of pressure;COP)の逆応答現象を考慮した徒手的誘導練習(練習)を5回行なった。測定は練習前に3回、練習後に7回行なった。 【結果】 対象者は、歩き始め前の静止立位で常に右側荷重(右約57%、左約43%:体重計を用い左右の重量比を測定した)であったため、静止立位でも右側の中殿筋および大腿筋膜張筋の活動が出現していた。そのため、基線が高く、筋活動の変化時期が不明であったことから、右側の歩き始めデータはサンプルから除外した。また、左側の歩き始めデータでも筋活動の変化時期が不明であったものもサンプルから除外した。 左側の歩き始めデータのうち、練習前では3回中0回(除外0)、練習後では7回中5回(除外1)の割合で中殿筋・大腿筋膜張筋の活動が認められ、活動時期は同時期であった。 【考察】 今回の対象は、健常成人であったが、練習前では左側股関節外転筋活動が認められなかった。その理由として、歩き始め動作前の静止立位が右側優位であるため、左側の歩き始めではCOPの逆応答現象が出現せず、左側股関節外転筋を活動させる必要がないと考えられた。 一方、練習後の筋活動は、練習により重心線が正中化され、荷重優位差が少なくなったため、COPの逆応答現象が出現し、股関節外転筋活動が出現したと考えられる。 今回は健常成人に対しての実験であったが、COPの逆応答現象には重心線の正中化が必要であると考えられた。また、重心線を正中化するということは、運動療法として応用できるのではないかと考えられた。 今後は、健常成人での基礎データの蓄積と患者での運動療法効果を検討していきたい。
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10.
理学療法施行対象者に対する状態変化カードの試作
山野, 薫; 薬師寺, 里江; 大平, 高正 ...
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌,
2006
Journal Article
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【目的】 ...
当院は25診療科554床を有する基幹総合病院であり、理学療法(以下、PT)部門においても急性期の対象者がその多くを占めている。院内では医療事故防止マニュアルを作成し、事故等が発生した場合にインシデント及びアクシデントレポートの提出を義務付けている。しかし、臨床ではインシデントの水準に届かない状態変化をしばしば経験した。このような事態に対し、我々は当科独自で「状態変化カード(以下、カード)」を試作したので報告する。 【対象】 2006年2月から4月までに起こったPT施行中の対象者に関するカード57件とした。 【方法】 状態変化の種別、内容、対応、その他について集計した。 【結果】 カード57件の内訳は、整形外科26件、脳神経外科8件、小児科6件、神経内科6件、外科5件、心臓血管外科3件、血液内科2件、内分泌・代謝内科1件であった。状態変化の内訳は、不整脈13件(22.8%)血圧変動17件(29.8%)、対象者の危険行動6件(10.5%)、精神や心理面の変化4件(7.0%)、転倒や転落未遂3件(5.3%)、SpO2の低下2件(3.5%)、疼痛3件(5.3%)、低血糖症状2件(3.5%)、出血の発見2件(3.5%)、その他5件(8.8%)であった。なお、不整脈は監視装置による波形変化の検出が9件であった。当科から主治医への報告24件、病棟看護師への報告42件、経過観察12件であった。また、不整脈、血圧変動、疼痛を主治医に報告後、運動療法を中止したもの10件があった。さらに、疼痛の持続をカードに記載し、主治医への報告により骨折が判明したものが1件、変形性膝関節症と診断され、治療を開始したものが1件あった。 【考察】 本試みからPT施行中における対象者には、循環器系の変動として不整脈、血圧変動など、運動器系のリスクとして認知症患者の危険行動、疼痛、下肢筋力の低下による膝折れなど、さらに精神・心理面の変化では不安、心配など、多種多様な理由で状態変化を呈することが解った。当科では看護師によるPT施行前のバイタルサインのチェックを実施している。問題のある場合は、施行中及び施行後にもチェックを行っている。理学療法士とのダブルチェック体制により、見逃しによるアクシデントを避けることに繋がっていると考えられる。カードの作成によりその事象が明確になると考えられる。
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