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  • 肩腱板断裂に対して、日常生活と仕事内容への指導を行なっ...
    牛越, 香; 大羽, 明美; 大江, 厚; 牛越, 浩司

    日本農村医学会学術総会抄録集, 2008
    Journal Article

    【はじめに】腱板断裂を有し保存的療法を行なう症例は、症状をかかえながら日常生活や職場での仕事を行っていくことが多い。今回、肩の疼痛、自動挙上不能、関節可動域制限、家事上・仕事上の制限を訴えて来院した腱板断裂の女性2人について、保存的療法を行ない、日常生活と仕事内容への指導を行なったので報告する。【症例1】74歳女性 左腱板断裂 右広範囲腱板断裂にて手術後、夫の農作業を手伝っていたが、左肩痛悪化と自動挙上不能を訴えて来院した。理学療法開始時の関節可動域:他動(自動)は、屈曲150°(60°)、外転85°(30°)、下垂位外旋30°であった。肩関節の状態は、軽度の腫脹が認められ、周囲筋の硬結・圧痛も強く、痛みの評価はNRSにて安静時痛1/10、動作時痛8/10、夜間痛5/10であった。保存的療法として、週1回の頻度で理学療法(物理療法・ストレッチ・マッサージ・自主トレ指導)を行なった。さらに、農作業や家事の内容、従事時間を聞き取り、痛みに応じて作業内容を調整するように指導した。2ヶ月後、関節可動域は、変化ないものの、腫脹(-)、NRSにて安静時痛0/10、動作時痛3/10、夜間痛3/10と改善した。家事では「洗濯物を干しやすくなった」などの変化を感じている。【症例2】63歳女性 右腱板断裂 看護師(特別養護老人ホーム勤務)  右腱板断裂にて過去に2度理学療法を受けた既往があるが、いずれも数回の通院にて中断し、症状の改善には至っていなかった。今回、夜間痛、動作時痛(家事・車の運転・入所者の介助動作など)、関節可動域制限を訴えて来院した。理学療法開始時の関節可動域:他動(自動)は、屈曲155°(135°)、外転75°、下垂位外旋35°、下垂位内旋25°であった。肩関節の前面に軽度の腫脹、周囲筋の硬結、圧痛を認め、痛みの評価はNRSにて安静時痛2/10、動作時痛6/10、夜間痛3/10であった。保存的療法として、週1~2回の頻度で理学療法(物理療法・ストレッチ・マッサージ・自主トレ指導)を行なった。また就労によると思われる疼痛に関しては、その方法の変更や工夫を検討し、自主トレが肩の状態に及ぼす影響について意識するように指導した。7ヶ月後、関節可動域は、屈曲150°(150°)、外転85°、下垂位外旋40°、下垂位内旋25°であり、硬結、腫脹は軽減していた。疼痛はNRSにて安静時痛1/10、動作時痛3/10、夜間痛1/10と改善した。現在は、長距離の運転も楽にできるようになっている。【まとめ】腱板断裂を有し、保存的療法を施行した女性2症例を経験した。通常の理学療法に加え、肩の疼痛やコンディショニングを左右する家事・仕事の量や内容に対して指導を行なった。保存療法を選択したため、関節可動域や筋力といった機能障害面の改善は困難であったが、日常の中での使い方や作業時の工夫を行うことで、疼痛や動作の行ないやすさが改善し、外来通院のみで良好な結果を得る事ができた。