DIKUL - logo
E-viri
  • 地形的背景からみた岩手県北上山地における平成28年8月...
    金, 俊之; 檜垣, 大助

    日本地すべり学会誌, 2019, Letnik: 56, Številka: 3
    Journal Article

    本論は, 岩手県北上山地中央部において, 2016年8月台風第10号に伴う豪雨によって発生した表層崩壊について, その発生場を地形的背景に着目して分析を行なった。現地調査と赤色立体地図を用いた詳細な地形判読により同台風で発生した土砂生産や移動をみると, 年超過確率300年を超える時間雨量があったものの, 土砂生産は「下位谷頭凹型斜面及びそれに連なる遷急線下方斜面」, 「その他の斜面」, 「埋積谷」における崩壊深1m程度の表層崩壊であり, これら生産された土砂は土砂流として流出し, 元の地形を大きく変化させるまでには至っていなかった。一方, 流域内にはTo―Cu火山灰 (約5,000~5,500年前降下) に覆われ, 完新世前期の土砂移動で形成されたとみられる大礫を含んだ「土石流段丘」が今回確認された。土石流段丘を構成する大礫等の一部は, To―Cu火山灰降下前に「下位谷頭凹型斜面」を形成した土砂生産によるものとみられる。堆積土砂の礫径から土砂移動の規模を推定すると, 今回の台風による豪雨に比べて大規模な土砂移動が過去に存在したものと推察された。