DIKUL - logo
E-viri
  • 静注用γ-グロブリン製剤中のベロ毒素中和抗体の検討
    足立, 枝里子; 吉野, 健一; 木村, 剛; 松本, 洋一; 竹田, 多恵

    感染症学雑誌, 1998/08/20, Letnik: 72, Številka: 8
    Journal Article

    ベロ毒素産生性大腸菌 (VTEC) 感染症に対して静注用ヒトγ-グロブリン製剤はしばしば重症患者の治療に使用されているが, その有用性についての議論もある. 我々は, 既存の静注用ヒトγ-グロブリン製剤とその原料となるヒト血漿の抗VT中和活性をin vitroで測定し, 重症合併症の予防薬として期待できるか否かを検討した. VTに対する中和抗体はヒト由来腎腺ガン細胞 (ACHN細胞) を用いた細胞毒性試験で調べた. 47ロットのγ-グロブリン製剤を調べた結果, 輸入血漿由来 (29ロット) は全てが最終濃度12.5mg/mlで, ほぼ完全にVT1 (最終濃度125pg/ml) を中和し, 製造方法の違いによる中和活性の差は認められなかった. 一方, 国内献血血漿由来製剤 (18ロット) は, 輸入血漿由来に比べ平均で5分の1程度の中和能しかなかった. VT2 (最終濃度125pg/ml) を中和する製剤は存在しなかった. またグロブリン製剤の原料として使用されるヒト血漿について239サンプルを調べた. この血漿は本研究に使用したロットのグロブリン製剤とは無関係で, 無作為に選んだものである. その結果, 輪入血血漿 (188サンプル) の約1割がVT1 (最終濃度12.5pg/ml) を50%以上中和したのに対し, 国内血血漿 (51サンプル) では1検体しか中和能を示さなかった. 輸入血血漿は国内血血漿よりVT1中和活性を有するものが多く, 原料となっている血漿の中和力価のレベルがγ-グロブリン製剤のVT1中和活性をよく反映していたと思われた. 治療においては, 中和活性の高い血漿を原料として選択することにより, 高力価のグロブリン製剤が期待でき, 患者血中でのVT1中和能も期待できると思われる. またγ-グロブリン製剤のVT2に対する効果は全く期待できなかったことから, VT2に対する治療法としては特異性の高い中和抗体の早期開発が望まれる.