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  • 佐々木, 良一

    電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review, 2011/01/01, Volume: 4, Issue: 3
    Journal Article

    社会のITシステムへの依存度の増大に伴い,ITシステム関連の安全の問題を故意の不正だけを対象とするのではなくシステムの故障やヒューマンエラーも同時に扱い,従来の「情報セキュリティ」の概念だけで扱うのではなくプライバシーやリライアビリティ更にはユーザビリティなどの問題も併せて扱うべき時代になっていると考えられる.このため,筆者らはこのような問題を「ITリスク」の問題として広くとらえ,安全の問題に不可欠な不確実性を考慮し確率論的な扱いを行うこととするとともに,一つのリスク対策が別のリスクを引き起こすという「リスク対リスク」あるいは「多重リスク」の問題を正面から扱うこととし,そのための学問を「ITリスク学」と名付け研究を行ってきた.この間,この「ITリスク学」の発展のために,基本的な考え方を佐々木良一「ITリスクの考え方」(岩波新書,2008)としてまとめるとともに,日本セキュリティ・マネジメント学会の中に「ITリスク学研究会」を2008年5月に設立し,活動を続けてきた.本稿では,なぜ,「ITリスク」という概念や,「ITリスク学」という学問が必要であると考えたかについて述べた後,技術と社会と安全の関係を考慮しつつITリスク学の現状を報告するとともに,今後の展開について記述する.