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  • 認知症家族介護者におけるWell-being獲得とは
    清家, 理

    日本老年医学会雑誌, 2021/07/25, Letnik: 58, Številka: 3
    Journal Article

    本稿では,介護者のwell-beingとは何か,またwell-beingの獲得を確認する方法とはどのようなものか,理論と実践,二側面の先行研究を用いて考察した.well-beingとは何かについての回答は,立場によって大きく異なる.哲学的側面では,“amounts to the notion of how well a person's life is going for that person”という概念に相当するとされている.しかし,正確さに欠ける懸念もあり,well-beingを定義する際には,定義のStrategy(分析対象・議論領域・定義の方向性),subjective well-beingかpsychological well-beingかのスタンスを検討する必要性がある.そして,心理学領域から,“feeling good and functioning well”“個人の人生における快い主観的な経験,意味・意義のある活動,人間としての可能性を実現する社会的な関係から成る複合的な概念”という定義がなされている.これらの定義の根底にあるのはthe whole human pictureを捉える重要性である.さらに発展させた形態としてWell-beingの構成要素がPERMA(Positive Emotion,Engagement,Relationships,Meaning,Accomplishment)という仮説的定義があり,この構成要素がwell-beingの予測因子になりうるか研究が進められている.一方,介護領域の介入試験のアウトカムで用いた既存尺度の探索Review研究では,1.Global Measure of well-being(Depressive Symptoms・Mental health・QOL・Satisfaction with life・Health),2.Caregiver-Specific Well-being measures(Burden・Role strain・Personal strain/Stress・Competence/self-efficacy)に大別された.そしてDepression,Burdenなどwell-beingのnegativeな側面に焦点化した測定が大半を占めた.この結果は,従来の疾病管理的側面の体験により,Patho-genesis的な志向(健康にとって望ましくない要素・問題を除去し改善することが善)への親和性を示している.認知症介護を巨視的,包括的に捉え,介護者のWell-beingを定量的に評価する簡便な測定ツールが無いとするならば,当面は,複数のツールで評価せざるをえない.測定する内容(種別・項目)を増やすことは,測定対象者(介護者)のQOLを著しく下げることになりかねない.認知症介護を巨視的,包括的に捉え,介護者のwell-being状態を簡便に把握するにはどのようにすればいいのか,その解として,介護者向け心理教育的介入試験で実施したSocial Work手法のEco-mapにヒントがあることを示した.